頭痛や肩こりは歯に原因があることも? お口から身体全体の健康を目指す全顎治療とは?|Teeth Me デンタルクリニック:柿原 由依 先生
今回取材させていただいた先生
インタビュアー
「Teeth Me デンタルクリニック」とはどのようなクリニックなのでしょうか? 先生が大切にされているコンセプトを教えてください。
お口の健康を通して身体の健康も目指して、0歳から100歳までどの年代の方も通いたいと思っていただけるようなクリニックにしたいと考えています。
「Teeth Me デンタルクリニック」という名前は、私自身が大切にしている診療の姿勢の頭文字から名付けました。
お口の健康を通して身体全体の健康を目指す“Total healthcare”、おいしく食べられるようバランスを整える“Eatable”、患者さんに寄り添う“Empathy”、信頼されるかかりつけを目指す“Trust”、定期的な通院習慣を願う“Habit”、治療後も長期的な維持を目指す“Maintain”、患者さんとの二人三脚を目指す“Each other”。このコンセプトに反しない診療を提供していきたいと考えています。
とはいえ、「歯科クリニックは歯が痛いときだけ行く場所」というイメージをお持ちの方がまだ多いかもしれません。しかし、歯に不調がないときもいらしていただきたいですし、皆さんに「またここに来たい」と思っていただけるようなクリニックにしていきたいと考えています。
また、お子さんや妊婦さん、お仕事や家事でお忙しい方など、患者さんはそれぞれに多様なバックグラウンドをお持ちです。どの年代のどんな方にも「通いたいと思ってもらえる場所」にしたいと願い、それぞれの世代にふさわしい治療のご提案を目指しています。
どんな方も通いたい場所にするために、クリニックの設備でこだわった点はありますか?
歯科クリニック独特の匂いがしないように気を付けているほか、内装はリラックスできる居心地のよい空間になるようにこだわりました。
大人だけでなくお子さんもご来院しやすいよう、できるだけ歯科クリニック独特の薬液の匂いがしないように配慮しています。
また、インテリアもクリニックというよりは明るいカフェのような居心地のよい雰囲気を目指しました。緊張してご来院される患者さんに少しでもリラックスしていただきたいと思い、ゆったりとお待ちいただけるような空間づくりに努めています。
滅菌室は、滅菌の様子が患者さんから見えるようにあえて透明のガラス張りにしています。歯科クリニックで使用済みの道具を滅菌するのは当たり前のことですが、滅菌しているところを実際にご覧いただくことで、不安なく受診していただけるようにしたいと思い、取り入れました。
そのほか、患者さんが周囲を気にすることなくお悩みを何でもお話しいただきやすいように、プライバシーに配慮したカウンセリングルームを設けました。治療内容や治療期間、費用など不安なところがあれば、遠慮なくご質問いただきたいと思います。
コンセプト実現のために、診療面ではどのようなことを心がけていらっしゃるのでしょうか?
歯科では通常、対症療法を行っていますが、原因を解消しなければお悩みが再発し何度も通院を繰り返すことになります。根本的な原因を探り、歯との向き合い方を知っていただくきっかけとなるよう、カウンセリングに力を入れています。
多くの場合、患者さんが歯科クリニックを受診するきっかけは痛みをはじめ具体的な悩みがあるときではないでしょうか。通常、歯科クリニックで提供しているのは、何らかの症状を軽減するための治療を行う対症療法です。
しかし、虫歯や歯周病などのお悩みを解消したとしても、根本的な原因を解消しなければ、また同じような悩みが生じて受診を繰り返すことになります。そのため、対症療法ではなく根本原因を探り、その原因を解消していくことが大事だと考えています。
たとえば、歯をきちんと磨いているのに頻繁に虫歯ができるという方は、その原因に歯並びも影響しているかもしれません。そういった方には、矯正治療をご提案する場合もあります。
これは一例ではありますが、できる限りお悩みの原因を探って、患者さんの20年~30年後を予測したうえで、治療をご提案いたします。
歯と長年付き合っていくのは、患者さんご自身です。カウンセリングをきっかけとして、まずは歯のことを心の片隅に留めるところから始めていただければと思っています。実際、メンテナンスに通い続けるうちに、意識が変わっていく方もいらっしゃるんですよ。
歯を1本単位で治療するのではなく口の中全体を診る全顎治療
全顎治療を行っていらっしゃるそうですが、全顎治療とはどういった治療なのか教えていただけますか?
歯を1本単位で診るのではなく、お口の中全体をひとつの単位として捉え、噛み合わせや顎関節も含めて全体の治療を行うのが全顎治療です。
全顎治療とは、歯の1本1本を診るのではなく、お口の中をひとつの単位と捉えて、噛み合わせや顎関節の状態も含めお口全体の治療を行うことです。当クリニックは、「全顎治療」というメニューをご用意しているわけではなく、どの患者さんに対しても、基本的に全顎治療を行っています。
さまざまな不調の原因は、頭から首まで、頭頸部のバランスの崩れにある言われています。たとえば、右側でばかり噛んでいる、あるいは奥歯でばかり噛んでいるといった偏った噛み方が、頭痛や肩こりなど歯以外の不調につながることもあるのです。その原因を改善するためには、歯を1本ずつ治療していく対症療法では不十分だと考えます。
そのため、噛み方のくせを改善し筋肉のバランスを整えることは、顎関節の負担を軽減させるほか、頭痛や肩こりなど身体の不調を軽減させる作用も期待できます。
ちなみに、歯がない方は、歯があったときと比べると、筋肉の使い方が変わり表情も変化しています。入れ歯やインプラントで失った歯を補うことは、口元を美しくし食事を噛みやすくするだけではなく、顔の表情を整えることにもつながるのです。
全顎治療はどのような流れで行うのでしょうか?
カウンセリングでお悩みを伺い、お悩みに応じた治療法をご提案後、患者さんに治療を受けるかどうかを決めてもらいます。
カウンセリングでは、歯のお悩みに限らず、身体の不調・ご要望などすべてお話しいただくようにしています。
また、カウンセリング時には口腔内や口元を見せていただくだけではなく、肩から上のお顔全体の写真を撮影して、姿勢やバランスも含め確認します。偏った噛み方を続けることによって筋肉も偏り表情も変わるため、姿勢や筋肉の使い方を確認しながら悩みの原因を探っています。
その後、お口の現状やお顔のバランスなどを把握したうえで、考えられる治療計画を複数ご提案していきます。ご予算の都合もあるかと思いますので、選択肢の中でどこまで行うかは、患者さんご自身に決めていただきます。
たとえば、虫歯の原因は歯並びにあるので被せ物でかみ合わせを整えたり、矯正が必要とご提案することがあります。ご予算やお時間の都合で今すぐ治療に取りかかるのは難しいこともあるでしょう。そういった場合には、今できるケアで悪くならないように予防し続けられるようお手伝いします。
患者さん自身がご納得のうえで治療を進められるようにいたしますので、まずはご相談いただければと思います。
0歳から100歳までの患者さんを対象にされているとのことですが、お子さん向けに行っている治療があれば教えていただけますか?
口腔機能発達不全症のお子さん向けに、お口の周りの筋肉を正しく使うトレーニングも行っています。
当クリニックでは、お子さんの口腔機能発達不全症の診断と治療も行っています。口腔機能発達不全症にかかると、歯並びが悪くなったり、口をうまく閉じられず口呼吸をしたりなどの症状が現れますが、10歳までであれば、お口周りのトレーニングを行うことで改善が期待できます。
口腔機能発達不全症や歯並びの悪さによって起こる口呼吸は、免疫力を低下させ、かぜや慢性扁桃炎を引き起こす原因になるとも言われます。お口の健康を維持することが身体の健康を維持することにつながるのです。
大人になって口腔内の環境が決まってしまったら、その環境を受け入れて生きていくしかありません。その前にできることを、親御さんにお伝えしていきたいと考えています。もちろん、大人になってからでも、その段階でできるケアをしていくことが大切です。
見た目の美しさだけでなく、治療後に虫歯や歯周病を引き起こさない施術を提供
ところで、先生はインプラント治療にも力を入れていらっしゃるかと思います。インプラント治療を行うにあたって、先生が大切にされていることがあれば教えてください。
我慢してきた患者さんを少しでも早く楽にして差し上げたいという思いから、できるだけ早くインプラントに替えられるように心がけています。
インプラント治療を行ううえでもっとも大切にしていることは、できる限り早く噛める状態を目指すことです。患者さんは歯を失い、日々の食事のたびに、辛い思いをしながら召し上がっていらっしゃいます。とても困ってご来院されているわけですから、経験と知識を活かして、できる限り早く楽にして差し上げたいと思うのです。
たとえば、抜いたその日にインプラントを埋め込む抜歯即時インプラントであれば、通常なら発生する抜歯からの待機時間2か月を短縮することができます。日々、インプラントの治療方法は進化を続けているので、新しい技術を今後も学び続けて、患者さんに還元していきたいと思っています。
かぶせ物やインプラントなどの治療で、見た目を気にされる患者さんのために行っている工夫はありますか?
歯科技工士が立ち会いのもと、患者さんに確認しながら理想に近付けられるように微調整しています。
最近は、型取りも光学印象というデジタルに移行していますので、3Dスキャナーで撮影してしまえば型取りしたそのままに再現することは可能です。
それでも、見た目にこだわりたい患者さんであれば、歯科技工士が立ち会うようにしています。仮歯を作る段階で、色や形をどうしていきたいか、患者さんのご希望を伺い、理想の見た目になるまで何度も微調整を繰り返していくのです。
また、正確な型取りのために、ジンパックという細い糸を歯と歯茎の境目に巻き付けて、歯にかぶさった歯茎を押し上げ、接合部の際まできちんと見えるようにしてから型取りするという工夫もしています。これは、見た目をきれいに仕上げるだけではなく、虫歯や歯周病を予防するためにも必要な工程です。
なお、虫歯や歯周病は、細菌の感染によって起こります。万が一、かぶせ物の接合部にすき間があると、そこに汚れが溜まり、虫歯や歯肉炎の原因になりかねません。きれいな仕上がりを目指すだけではなく、細菌の感染が起きないように口腔環境を整えるのも、私たちの大事な仕事です。
そのほかに施術でこだわっているポイントがあれば教えてください。
感染予防と衛生管理にこだわっており、虫歯や損傷した歯に行う根幹治療では、細菌感染予防のためラバーダムを装着していただきます。
当クリニックでは、根管治療という歯の根の治療を行っています。その際、ラバーダムという薄いゴム製のシートを装着し、治療する歯だけを露出させることで、細菌の感染を防いでいます。
根管治療で治療する象牙質や歯髄は、柔らかく感染しやすい場所のため、歯の根を無菌に近付けることが必要です。ですが、唾液の中には少なからず細菌が含まれているため、ラバーダムを使って唾液の浸入と感染を予防しています。
このように患者さんのために、できる限りのことをして差し上げたいという思いから、ラバーダムの使用はこだわっているポイントのひとつですね。
虫歯や歯周病の再発を防ぐために、患者さんに対してどのように指導されているのでしょうか?
細菌感染を予防のため、患者様の年齢や生活環境に合わせたセルフケアのと治療計画をご提案しています。
当クリニックでは、細菌感染のリスクを低減し、患者様お一人おひとりが健康な口内環境を維持できるよう、個々に合わせたケアを心がけています。来院される患者様の歯をきれいにすることは基本ですが、それに留まらず、お子さまから大人まで、年齢や生活環境の変化に応じたセルフケアの方法と治療計画をご提案しています。
年齢を重ねるごとに、必要なメンテナンス方法は変化します。例えば、子どもの場合は、口腔の発達や歯並びへのアプローチが重要です。成人になると、虫歯や歯周病といった口内トラブルへの対処が必須になります。また、子育て中の方など、日々忙しい生活を送る患者様には、限られた時間の中でも効果的な治療計画をご提供しています。
さらに、セルフケアでは「磨き残しを20%以下に抑える」を目標に設定し、日々のブラッシングが細菌感染を防ぐ鍵となることをお伝えしています。
最後に今後の展望を教えていただけますか?
今はお子さんの姿勢のトレーニングができるように勉強中です。全身の健康管理をお手伝いするために、できることを見つけて努力を続けていきたいと思います。
患者さんのために、治療の辛さをできる限り軽減する工夫をこれからもしていきたいと考えています。たとえば、型取りに印象材※を使わずに光学印象を取り入れているのも、そのひとつです。
※印象材は歯科治療で歯や口腔の形を複製するために使用されます。光学印象材は光を使い、デジタルで3Dモデルを作成します。
また、今は、お子さんの姿勢のトレーニングもできるように勉強しているところです。全身の健康管理のお手伝いができるように、自分ができることを見つけて努力していきたいですね。
そのほか、これはまだ具体的な話ではありませんが、せっかく医療モールの中に開業したので、できれば近隣のほかのクリニックの先生と何か連携できるようになれば嬉しいと考えています。また、予防に関心を持つ地域の方々に向けて、連携して何か貢献することができたらと思っています。
お口のトータルケアから行う全身の健康管理にご興味やご関心をお持ちの方は、まずはお気軽にご相談にいらしていただければ幸いです。