「口の中が良い環境になってからでないと治療はできません!」矯正治療と一般診療の両方を行う 目白ヶ丘デンタルクリニック:藤澤 將人先生
今回取材させていただいた先生
インタビュアー
目白ヶ丘デンタルクリニックで大切にされていることを教えていただけますか?
治療前に、検査・初期治療・治療計画の説明を3回に分けて丁寧に行っています。
当院では治療前に、ドクターと歯科衛生士による検査、治療計画の説明を数回に分けて行っています。
初診日は、口腔内や顔面の写真撮影・レントゲン撮影・歯周病検査と今後の流れを説明します。腫れや痛みがある場合には初診日に応急処置を施します。
2回目は、歯科衛生士が唾液検査と歯石除去のクリーニング、ブラッシング指導を行います。歯を綺麗にし汚れや炎症のない状態にすることを初期治療と言い、一番良い治療をするためにはこの初期治療が重要です。
3回目は、検査結果の解説と、治療計画・材料・費用などの説明を行います。この際、治療を進めるうえで起こりえそうなリスクや副作用は一通り説明し、全てご納得いただいた上でその次から治療を行います。
「説明が丁寧」との口コミが多くありましたが、こだわっている点はありますか?
問診表を見ながら、患者さんの関心事に合わせて説明方法を変えています。
患者さんの人となりを見ながらその人その人に合わせて説明しないと伝わりません。矯正して見た目を綺麗にしたいのに「見た目は置いておいて、噛み合わせを治しましょう」と言われても話を聞く気になりませんよね。
当院では問診表に細かく記入していただいて、患者さんの情報を引き出します。たとえば、健康のために行っていることや、保険治療と保険外治療どちらがご希望がついてなども書いていただいて、治療に対するモチベーションをうかがいます。
そして、患者さんが興味のあるところからアプローチして説明を進めます。みなさんに伝えたいことは一緒ですが、問診票を見ながら個人に合わせて説明の仕方を変えることが大切だと考えています。
メンテナンスはどのように行っているのですか?
3か月に1回のメンテナンスをおすすめしており、虫歯・歯周病・詰め物の劣化のチェック、歯石除去、着色除去などを45~60分かけて行っています。
当院ではメンテナンスに45~60分かけています。歯の状態を確認する定期検査に加えて、超音波による歯石除去や、プラークと着色の除去・ブラッシング方法、生活習慣改善のアドバイスを行います。
口内環境が悪くなる生活をして数か月で、虫歯や歯周病になりやすくなりますが、3か月に1回メンテナンスを受ければそれらのリスクを軽減させられると言われています 。
通っていただくためには信頼関係が大事ですが、コミュニケーションで大切にしている点はありますか?
ゆっくりできるよう時間を取り、治療の話だけでなく世間話も大切にしています。
信頼関係は、相手の人柄を知ることで生まれると考えているために、メンテナンスの時間を長くとってゆっくり話をしています。
とくに、お互いの好みや個性を知るための世間話が重要です。メンテナンス中はゆっくりくつろいで世間話を楽しんでいただいているので、院内は笑い声で溢れています。世間話を多くすることで、通院が楽しみだと言っていただける方もいますよ。
また、院内は3部屋の完全個室と2部屋の半個室としています。少ない診察台数で落ち着いた雰囲気になるため、患者さんもリラックスして治療を受けていただいています。
普段から丁寧な診察をしなければ、信頼していただけず、患者さんに伝えたいことが伝わりませんよね。そのため、1度にたくさんの患者さんを診るのではなく、1人ひとりに時間をかけて誠心誠意対応し、リスペクトし合う関係を構築していきたいです。
実は身体の健康に関わる歯の矯正
歯科矯正についてこだわっているポイントはありますか?
当院では、セルフライゲーション型マルチブラケット装置を使用しております。
通常の矯正では、歯につけるブラケットと呼ばれる装置にワイヤーを繋げるためにゴムを使用します。
一方当院ではシャッターでワイヤーを留める「セルフライゲーション型マルチブラケット装置」を使用しています。従来の装置に比べてゴムによる抵抗をなくせるため、痛みが少なく、より歯を早く動かすことができます。
また、着脱も1歯毎にゴムをかけるのではなくシャッターを開閉させるだけでよいため、患者さんが術中に口を開けっ放しになる時間が減ります。
近年マウスピース矯正も人気ですが、ワイヤー矯正との違いについてどうお考えですか?
歯並びを綺麗にするならマウスピース型矯正装置も適していますが、噛み合わせを治すならワイヤーによるマルチブラケット装置の方がおすすめです。
マウスピース型矯正装置で歯を動かす場合、上下の歯に0.5ミリのマウスピースを使用します。顎の構造上、奥歯を1ミリ開けると前歯は2〜3ミリ開きます。そのため、マウスピースを入れた状態だと奥歯から先に歯が当たるため、前歯を噛ませるために顎関節はズレた状態で噛み合うことになります。そのため、マウスピース型矯正装置で咬み合わせを緊密にさせるのはどうしても限界があります。
一方、マルチブラケット装置によるワイヤー矯正は直接歯が当たる状態で咬み合わせを作れるため、高い精度で整えられます。そのため、マウスピースによる矯正の仕上げにワイヤーによる矯正をすることもあります。
噛み合わせが悪いとどんなことが起きるのでしょうか?
口の中だけではなく、体全体の疾患に関わります。
噛み合わせの悪さは、さまざまな疾患を引き起こします。
例えば、噛み合わせがずれたまま寝ている間に食いしばりをしていると、偏った筋肉の使い方をしてしまい、頭痛の原因となります。
また、子供の噛み合わせが不揃いの場合、その非対称性が骨格の成長に影響を及ぼし、結果として骨格のズレに繋がります。このような状況では、歯並びの矯正がより複雑になります。非対称な噛み合わせは、顔の見た目のみならず、全身の姿勢にも影響を及ぼすため、成長期に適切な治療を行うことが重要です。
また、歯並びを治すことで歯周病や虫歯の予防に繋がります。歯周病は糖尿病、高血圧、早産、流産、心筋梗塞や脳梗塞のリスクとなりえます。また、口の中の細菌が溜まると誤嚥性肺炎の原因になったりします。
このように、噛み合わせの矯正治療は体全体の健康に関わります。子どもから大人まで気になる方はご相談ください。
子どもの歯の健康には、本人と保護者の協力が必要
子供の歯並びを良くするためにはどのような治療が必要ですか?
舌と口の周りの筋肉を鍛えながら、姿勢を改善させます。
成長期の顎の骨格や歯並びには、舌の位置と口の周りの筋肉や「食べる」「喋る」「呼吸をする」などの口腔機能の使い方が影響を及ぼします。そのため、子供の矯正する際には、口周りの筋肉を鍛えたり正しい機能を整える「筋機能療法」を行います。また、舌が口の天井部分にあることで顎は正常な成長をしますが、猫背だと「低位舌」と呼ばれる低い舌の位置に来やすくなるため、正常な歯並びを作れません。
姿勢の制御には足指がしっかりと地面を支えていることが大切です。当院では姿勢の改善も行います。
ちなみに、正しい姿勢は、耳、肩、腰、膝、くるぶしが一直線になることです。そのためには、足の指が開き、足の爪が真上から見えていて、足の指に体重がかかっていることが重要です。
子供の歯並びを改善するために、いつ頃から歯医者に連れて行くのが適切ですか?
理想は生まれる前に来院していただきたいです。
保護者の口内細菌数が子供の口内細菌数に影響するので、子どもが生まれる前からお母さんは口内ケアをすることが大切です。
また、乳児の口の筋肉と舌の使い方は、抱っこの仕方や授乳方法で決まります。なので、子供の歯の成長には、妊娠中からお母さんに抱っこや授乳の仕方を教えるのが1番良いんですよ。
さらに、2〜9歳ごろに一気に顎が大きくなります。その時期に姿勢や噛み方、鼻呼吸などを指導します。10歳ごろには顎の成長が止まるので、できるだけ早い時期の改善が望ましいです。
保護者とのコミュニケーションで大切にしていることを教えていただけますか?
保護者に負担をかけないように心掛けています。
最近のお子さんはみさなん習い事などで忙しいです。そのため、歯のためにやった方がいいことを全てやってもらうのは不可能です。なので、患者本人と保護者と我々のみんなで話し合って、カリキュラムを決めていきます。もしお家でのトレーニングができなかったとしても、子どもや保護者を責めることはしません。正論を押し付けず、患者さんに寄り添った指導を心がけています。
トレーニングは保護者と子どもの両者に指導をします。保護者が家でやらせるのではなく、先生との宿題として子どもにやってもらうことで子供の主体性が上がるんです。
指導する際、ただやるべきことを言うだけではなく、相手の同意を得なければ歯科医師としての責任は果たせません。正しい姿勢やトレーニングをする目的を理解し、患者さんが実践しようと思っていただければ、姿勢や歯並びはどんどんは良くなっていきます。
矯正治療だけではなく一般診療を行うこだわりとは
なぜ矯正治療だけではなく一般診療も行っているのですか?
すこしでも包括的に患者さんの役に立ちたいと思っているからです。
歯科医師である父親が一般診療と矯正治療の両方を行っていたので、大学生の頃までそれが一般的だと思っていたんです。
また、私を育ててくれた恩師に「"矯正専門医”になっても"矯正限定医”にはなるな」と言われました。私も、歯科医師たるもの歯は治したいと思ったので、矯正治療だけでなく一般診療も行っています。
歯科医療自体が楽しいので、真摯に向き合っているものの趣味のような感覚があります。
一般診療で心掛けていることを教えていただけますか?
患者さんにとって一番いい治療を受けていただきたいと思っています。
患者さんに説明する際、より長く健康な歯で生涯食事を楽しんでもらえるように治療方針をお話します。そのために質の良い材料を使いじっくりと時間をかけて治療をしたいという思いがあります。
費用がかかる分、完成度が高く丁寧な施術を行いますし、歯の治療は趣味のようにやっているので徹底的にこだわり切れます。
日本の保険制度は世界的に優れたものだと思いますが、歯科の領域に関しては虫歯の洪水と言われていた時代に作られた制度のため、「悪くなった歯を最低限度の材料で形態と機能を改善すること」を目的とされています。材料学的にも長期的に安定する材料は使用できません。例えば、一般的に保険で使用する材料の耐用年数は銀歯で平均5.4年、プラスチックの櫢脂ので平均5.2年と言われています。
また、保険診療には治療にかける時間が考慮されないため、1時間かけてじっくりと治療をしても10分でささっとそこそこに終わらせても先生に入ってくる保険診療の金額は同じです。これでは歯科医師にとっても患者さんにとってもメリットが少ない治療となりかねません。
その点、保険適用外の自由診療であれば保険制度にしばられることなく、世界的な科学的根拠に基づいた長期的に安定する材料でじっくりと時間をかけて治療をすることができます。歯への侵襲を最小限に抑え、長期的に予後のいい治療をするためには、本当は保険適用外の治療をオススメしたいです。
今後の展望について教えてください。
患者さんが今後20年、30年通ってくれる医院を目指したいです。
多くの患者さんを受け入れるために病院を広くしたい思いはありつつも、責任者として患者さん全員の口の中を診たいので、分院は作りたくないんですよ。 今後も「私に診てもらいたい」と思っていらっしゃる近所の方や紹介でいらっしゃる方を大切にしたいです。
さらに、現在信頼関係が出来上がっている患者さんの歯を生涯見ていきたいので、健康に過ごしたいと思っています。また、忙しいからといって手抜くこともなく丁寧に治療を行いたいですね。