“未病”のさまざまな症状にアプローチ!不足した栄養素を補うことで内側からの美しさと健康の実現を目指す「栄養療法」とは?|BIO CLINIC 表参道:金子 拓人 先生
今回取材させていただいた先生
インタビュアー
「BIO CLINIC 表参道」とはどのようなクリニックなのでしょうか?
当クリニックでは、予防医学と栄養療法を行っています。そのベースとなるのは、細胞レベルで不足している栄養素を補い、自己治癒力を高めることを目指す分子栄養学です。
当クリニックでは、健康と内側からの美しさをサポートし、ウェルネス※の実現を目指すために、予防医学と栄養療法のさまざまなメニューを提供しています。そのベースとなるのは、分子栄養学という学問です。
分子栄養学では、細胞の中で何が起きているのかを確認し、細胞レベルで不足している栄養素を補います。
細胞内にあるミトコンドリアは、各細胞が必要とするエネルギー(ATP)を作り出す器官です。このミトコンドリアが重金属の蓄積や栄養不足などによって障害されると、自己治癒力が低下しさまざまな病気につながると考えられています。
そこで、細胞内のダメージをケアし、不足している栄養素を補うことで、細胞の自己治癒力を高め、体をよりよい状態にしていくことを目指すのが分子栄養学の考え方です。この考え方をベースに、当クリニックではさまざまな検査や点滴療法などのメニューをご用意しています。
※より良く生きようとする生活態度
保険適用で行われる一般的な西洋医学をベースにした診療と、分子栄養学との大きな違いを教えてください。
西洋医学では症状があっても検査で異常値が確認されなければ病気とは診断されません。一方で病気になる前のさまざまな症状である**“未病”の根本原因にアプローチし、改善を目指すのが分子栄養学**です。
分子栄養学に限らず、西洋医学でも東洋医学でもアーユルヴェーダでも、すべての医学において根本にあるのは栄養だと考えます。
ただし、西洋医学は、細胞の内側ではなく形態を見て病気かどうかを診断する病理学から発展した学問です。病気になると細胞に炎症が起きたり、細胞の形が変化したりします。たとえば、顕微鏡で細胞の形態を見て、がん化しているのが確認されればがんと診断し治療するのです。細胞の形態ではなく内側で何が起きているかを分析する分子栄養学とは、アプローチの仕方が異なると言えます。
西洋医学に基づいた健康診断は、病気の早期発見を目的としています。たとえば病気を10段階で表した場合、5以上の異常値を見つけることを目指すのが健康診断の目的です。何らかの症状があっても、検査結果に異常値がなければ病気とは診断されません。
しかし、異常値以下だからといって「健康である」とは言い切れませんし、症状があることで多くの方が悩まれています。分子栄養学は、病気になる前の“未病”で悩まれている方の細胞で何が不足し、どのようなダメージが起きているのかを見て、原因から改善を目指す学問でもあります。
“未病”とは具体的にどのような状態なのでしょうか?
病気と診断されなくてもさまざまな症状で悩まれている状態を東洋医学では“未病”と呼びます。
お腹の調子が悪い・肌荒れ・眠りが浅い・太りやすい・疲れやすい・気持ちが安定しない・体調を崩しやすいといったさまざまな症状があったとしても、細胞の形態に変化がなく、検査結果が正常範囲内であれば病気ではないと診断するのが西洋医学です。
このような不定愁訴に対して、西洋医学では基本的に原因へアプローチするのではなく症状に対して治療をする対症療法を行います。
一方、この状態を“未病”と呼び、今はまだ病気ではないもののそのままにしておくと病気になる可能性があるので、早期にはたらきかけて発病自体を防止しようとアプローチするのが東洋医学の考え方です。
病気を川の流れにたとえてみましょう。何も症状がない状態を上流とすると、そこから下流に行くに従ってさまざまな症状が現れ始め、次第に重症になっていきます。その下流に行く前に、いかに食い止めるかという考え方です。東洋医学の“未病”に対するアプローチは、根本原因から改善を目指す分子栄養学とも通じるものです。
ただし、分子栄養学は西洋医学の標準治療を否定するものではなく、対症療法も大切なものだと考えます。栄養療法は、西洋医学の標準治療とも組み合わせて、症状の改善や病気の予防を目指していくものです。
栄養療法を取り入れた方がよいのはどのような人でしょうか?
病気の予防に取り組みたい方、気になる症状がある方におすすめですが、栄養療法はお子さんからご年配の方までどなたでも適応となる治療法です。
当クリニックにご来院される方の多くは、30-40代で健康意識の高い女性です。また、経営者の方もいらっしゃいます。
よくご相談いただくのは、発達障害、メンタルの不調、不妊のお悩み、自己免疫疾患、胃腸の不調などのお悩みについてです。
ただし、分子栄養学とは体を現状よりもよくしていくことを目指すもので、栄養療法はお子さん、妊婦さん、ご年配の方までどのような方に対しても適応となります。
何らかの症状にお悩みの方に限らず、健康でさらにパフォーマンスを上げたいと考えている方や病気の予防に取り組みたい方にもご相談いただきたいと考えています。
栄養療法を始めるにあたっては、どのような検査を行うのでしょうか?
足りない栄養素が何かを確認するために、カウンセリングと血液検査を行います。そのほか、必要に応じて、各種検査をご提案することも可能です。
栄養療法では、その方に足りない栄養素が何かを確認したうえで、不足している栄養素を必要なだけ補う治療を行います。従来は、どのような方に対しても、一律にビタミンC点滴やグルタチオン点滴をおすすめするというのが一般的な治療でした。一方で、お一人おひとりに合わせ個別化したアプローチを行うのが分子栄養学の考え方です。
そのため、まず何の栄養素がどれぐらい不足しているのかを確認するために、分子栄養学検査を行います。人によって不足している栄養素は異なりますし、必要な栄養素の量も10倍から100倍も違うと言われています。
まずはカウンセリングと多項目にわたる血液検査を行い、不足している栄養素と組織のダメージを解析します。この検査では、ビタミンやミネラルの不足、糖代謝、細胞の酸化ストレス、自律神経のバランス、解毒機能など多くのことを読み取れます。
また、分子栄養学検査のほかにも、重金属検査(オリゴスキャン・毛髪ミネラル検査)、腸内環境検査(GI-MAP)、有機酸検査、副腎ストレス検査、遅延型フードアレルギー検査などさまざまな検査で体の状態を確認することができます。
たとえば、遅延型フードアレルギー検査は、症状として現れるのが遅く、ご自身では気付きにくいアレルギー物質を調べる検査です。遅延型フードアレルギーは、頭痛や倦怠感、肌荒れ、メンタル症状、慢性疲労など多彩な症状を引き起こす可能性があります。体質に合う食べ物は人によって異なりますので、食事を見直すきっかけとしておすすめしている検査です。
検査の後、どのように栄養療法が行われるのかを教えてください。
栄養解析結果に基づいて、個別の食事コーチングを行います。食生活を変えるだけではなく、サプリメントや点滴で足りない栄養素を補っていただくことも可能です。
カウンセリングと検査の後は、栄養解析結果に基づき、不足している栄養素を十分に摂れるよう、管理栄養士による個別の食事コーチングを行います。
食生活だけを変えていくのか、あるいはサプリメントを取り入れて栄養素を補っていくのか、方法については患者さんにお任せしています。食事で足りない部分をサプリメントで補うハイブリッドをおすすめはしますが、患者さんのご希望に寄り添い、こちらから強制することはありません。
ただし、食事は基本であり、サプリメントだけに頼ればよいというものではありません。また、必要なサプリメントの種類も量も、お一人おひとり異なりますので、必要な栄養素を十分な量摂取できるよう個別にアドバイスいたします。
そのほか、必要に応じて点滴療法で足りない栄養素を補うこともできます。腸内環境ケアや重金属デトックスを組み合わせて、より健康な状態を目指していくことも可能です。
分子栄養学は、病気の治療のように期間を区切って行うものではなく、生活に取り入れていただくものです。3か月、半年、1年と経過を見てはいきますが、その後もずっと継続していただきたいと考えています。
栄養療法に加え必要に応じて重金属デトックスやエクソソーム点滴、NMN点滴などを組み合わせて健康を目指す
重金属デトックスはなぜ必要なのでしょうか?
重金属は知らず知らずのうちに体内に蓄積されさまざまな症状を引き起こす恐れがあります。
重金属は、知らず知らずのうちに体内に取り込まれて蓄積し、さまざまな不調の原因になると考えられています。有害な重金属は体に必要なほかのミネラルの移動を阻害する輸送障害を引き起こす恐れがあります。
たとえば水銀はさまざまな慢性疾患の原因となる恐れがある重金属です。日本では魚介類をよく食べるので、魚介類に溜まった水銀を摂取してしまいやすい傾向があります。水銀摂取が胎児に影響を及ぼす可能性についての報告もあるため、妊婦さんは、水銀濃度が高い魚介類の摂取を基準値以下に制限したほうがよいと推奨されています。
また、かつて歯科治療の詰め物でよく使われていたアマルガムにも水銀が含まれています。
蓄積してしまった有害な重金属を体から排出することで、不調の原因を取り除き、より健康な状態を目指していくためにも重金属デトックスをおすすめしています。
重金属デトックスの必要があるかどうかを確認するためにどのような検査を行っていますか?
重金属デトックスが必要かどうかは、重金属検査(オリゴスキャン・毛髪ミネラル検査)で確認します。
当クリニックでは、オリゴスキャンと毛髪ミネラル検査を行って、重金属デトックスの必要があるかどうかを確認しています。
オリゴスキャンとは手のひらに光を当てて、組織のミネラル濃度を測定する検査です。血液検査では測定できない必須・参考ミネラル20項目、有害重金属14項目やミネラルバランスなどの項目を確認できます。測定データはすぐにルクセンブルクの研究機関で解析されますので、その日のうちに検査結果をご説明できます。
毛髪ミネラル検査は、毛髪を3cmほど採取し毛髪におけるミネラルの排出バランスを確認する検査です。重金属によるミネラルの輸送障害のほか、副腎の疲労・耐糖能障害・酸化力・代謝量などが測定できます。
症状やご希望を伺ったうえで、どちらの検査がふさわしいかを判断し、ご提案いたします。
重金属デトックスはどのように行うのでしょうか?
重金属を排出しやすくする栄養療法のデトックス、キュレーション点滴などをその方の状況に応じてご提案します。
すでに体に蓄積してしまった重金属を排出するために、重金属デトックスやキュレーション点滴などを、その方の状況に応じてふさわしいプランを立ててご提案します。
重金属デトックスとは、重金属の吸収を抑え排出を促す作用が期待できる栄養素を食事やサプリメントから摂取する栄養療法です。
また、食事を改善するだけではなく、キュレーション点滴によってさらに排出を促すことも期待できます。キュレーション点滴とは、グルタチオン、DMSA(メソ-2,3-ジメルカプトコハク酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)など毒素を吸着し体外に出しやすくする作用を持つ薬剤を注入する点滴です。
当クリニックでは、エデト酸カルシウムナトリウム水和物とα-リポ酸の2種類の薬剤を使った点滴を行っています。エデト酸カルシウムナトリウム水和物は、重金属を挟み込むように結合し体からの排出を促す作用のある薬剤です。α-リポ酸は水銀やヒ素など有害金属と結合し、無毒化させるはたらきが期待できます。
点滴療法はキュレーション点滴以外にもいろいろな点滴を受けられるのですね。エクソソーム点滴について教えていただけますか?
エクソソームとは幹細胞を培養したときにできる上澄み液で、点滴で補うことで、エイジングケアや滋養強壮などさまざまな作用が期待できます。
エクソソームとは幹細胞を培養するときにできる上澄み液(幹細胞培養上清液)のことです。エクソソーム自体はただの容れ物でしかありませんが、その内部には細胞間の情報伝達を担うメッセンジャーRNAをはじめ、さまざまなメッセージ物質が含まれています。
エクソソームは人間の体内にもともとあるものですが、加齢や病気などによって細胞間でメッセージをうまく伝えられなくなることがあります。必要なメッセージ物質の含まれるエクソソームを体外から取り入れることで、滞っている情報が再び届くようにはたらく役割が期待されます。
当クリニックでは、乳歯由来の歯髄幹細胞上清液をはじめ、臍帯由来の幹細胞上清液、脂肪由来の幹細胞上清液などを目的に合わせて使い分けています。どこに由来するエクソソームかによって、含まれるメッセージの内容が異なるためです。
エクソソーム自体がまだ研究の途上にあり、可能性がある分、医師によってもさまざまな見解があるかと思います。研究データを参考に臨床の手応えを確認しながら、試行錯誤しつつ使い分けています。
歯髄由来のエクソソームは、神経の修復に作用するmRNAが多く含まれ神経細胞の成長作用が高いという実験結果も報告され、皮膚のエイジングケア、肝機能改善、滋養強壮、疲労改善、抗酸化作用、抗炎症作用などが期待できると言われています。そのため、当クリニックでも歯髄幹細胞上清液を中心に使用しています。
NMN(ニコチン・モノ・ヌクレオチド)もエクソソーム同様、今話題になっている成分かと思います。NMN点滴について教えていただけますか?
NMNは、長寿を司るサーチュイン遺伝子を活性化する成分ということでエイジングの作用が期待されます。
NMNは、ビタミンB3から作られた食品成分です。ハーバード大学医学部の研究で、NMNが体の中でNAD+(ニコチン・アデニン・ジヌクレオチド)の濃度を上昇させ、長寿を司るサーチュイン遺伝子を活性化させることが確認され、脚光を浴びています。
NAD+は、ミトコンドリアがエネルギーを新たに生成するときに必要となる成分ですが、加齢とともに減少します。また、NAD+には細胞内の古くなったミトコンドリアや異常なタンパク質を除去するといったはたらきも期待されます。
NMNを点滴で補うことによって老化予防や肌トラブルの改善が期待でき、現在はエビデンスが蓄積されている段階にあります。
まだ必要な人まで届けられていない分子栄養学の情報を今後も発信し続けていきたい
先生が分子栄養学の道に進まれたきっかけを教えてください。
心臓血管外科で麻酔科の医師として臨床に従事していましたが、手術が必要になる前に病気の進行を食い止めたいという思いが強くなり、予防医学に関心を抱きました。
私は、もともと麻酔科の医師で、心臓血管外科の麻酔を専門として、臨床に従事していました。オペ室で、手術を行う際の麻酔を担当するのが私の仕事でした。
心臓血管外科で手術を受ける患者さんというのは、病気が進行した状態の方ばかりです。もちろん、そういった方々の命を救うというのもとても大事な仕事だと思います。
しかし、そこまで進行する前に、なんとか病気の上流で食い止めたいという思いが強くなっていきました。予防医学とそれを実践するための分子栄養学という分野に対する関心が次第に高まっていったのです。
分子栄養学は、マニアックな分野ですが、これからますます必要になっていき、成長する分野だと考えていますので、盛り上げていきたいと思います。
分子栄養学を多くの人に伝えていくための今後の展望などあれば教えていただけますか?
分子栄養学は、まだまだ必要な人に届いていない状態だと思います。今後も世の中に広めていけるように情報発信に力を入れていきたいと思います。
分子栄養学は、まだ必要な人に対して十分にリーチできていない状態です。そこで、今後も引き続き、SNSや動画配信サービスなども利用して、情報発信に力を入れていきたいと考えています。
また、患者さんの診療だけではなく、企業に向けた分子栄養学やヘルスケアのサービスも展開していきたいと思っています。
クリニックでの活動にとどまらず、ここを拠点として世の中に分子栄養学が広まっていくような活動を行っていきたいですね。
最後に受診を検討されている読者の方に向けてメッセージがあればお願いします。
家でも職場でもないサードプレイスとしてホッとできる空間を目指しています。健康や病気の予防に興味のある方は、ご相談にいらしていただければと思います。
ご来院のハードルが低くなるようにクリニックの内装は、よい意味で病院らしくないホッと一息つけるような空間にしました。
健康に興味のある方の中には、心が傷ついている方も多くいらっしゃいます。そういった方々の心のケアもできるような空間、家でも職場でもないサードプレイスを目指しています。
細胞レベルで根本から健康を目指したい方、病気の予防に興味のある方、体の内側から美しさを手に入れたい方は、ぜひお気軽にご相談にいらしてください。