縦方向の歯の移動も可能に！　ガミースマイルの改善を目指す改良型口唇移動術の特徴とは？|明海大学PDI東京歯科診療所：松田 哲 先生・高野 安紀子 先生

当診療所は、明海大学の付属診療所です。明海大学歯学部付属明海大学病院と同じように専門性を備えた歯科診療を行っているのが特徴です。

歯科・矯正歯科・歯科口腔外科と3つの診療科を設けているほか、インプラント・ホワイトニング・歯周病を専門的に診療しています。

矯正治療では、歯のがたつき（叢生）や出っ歯（上顎前突）などを改善し、美しい口元に整えることを目指します。また、見た目の美しさに加え、口元が閉じやすくなったり正しい噛み合わせによって物が噛みやすくなったりと、さまざまなメリットが期待できる治療です。

矯正治療で歯の位置をどのように移動するかはとてもデリケートな部分です。患者さんとご相談のうえ、できるだけご希望を伺いながら治療を進めていきますが、歯並びによっては抜歯が必要になることもあります。

当診療所は、矯正歯科だけではなく歯科・歯科口腔外科などの診療科も備えていますので、一般診療を担当する歯科医師と連携し治療を進めていくことが可能です。矯正歯科単独では難しい治療も、他科との連携によってご提供できるのが強みです。

矯正だけではなく色が気になる方には、ホワイトニングの施術もご提案できます。ひとつの診療所内でさまざまな治療までカバーできるのは患者さんにとってメリットとなるでしょう。

矯正治療は、大きく分けるとマウスピース矯正とワイヤー矯正、2つの方法があります。マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを装着することで歯並びの改善を目指す治療法です。矯正器具が目立ちにくく、歯磨きや食事の際に取り外すことができるため、歯磨きが楽で、食べ物の制限がないというメリットがあります。

その一方で、マウスピース矯正は歯の移動に限界があります。がたつきがひどい場合はマウスピースだけで矯正するのは難しいため、患者さんのお口の状態をきちんと確認し、対応可能かどうかを検討したうえで導入しなければなりません。

ワイヤー矯正とは、歯にブラケットと呼ばれる装置を接着し、そこにワイヤーを通して歯を動かす治療法です。固定式で、一度装着すると取り外せないため歯磨きが難しく、硬い食べ物を噛んではいけないといった食事の制限まであります。また、矯正器具が目立ってしまうのもデメリットです。

しかし、マウスピース矯正よりも幅広い症例に対応が可能で、一度装着してしまえば、歯の動きに関して患者さんご自身で行うことが少ないというのはメリットだと思います。

マウスピース矯正とワイヤー矯正、どちらの矯正方法が向いているかは、患者さんのお口の中の状態やご希望によっても変わりますので、ご相談しながら選択していきます。抜歯が必要な場合や、複雑に動かす必要がある場合には、マウスピースでは対応が難しいのでワイヤー矯正をご提案します。

さらに、適材適所でマウスピースとワイヤーの両方を組み合わせ、どちらのメリットも活かしながら矯正するコンビネーション矯正も当診療所では行っています。ケースによっては、コンビネーション矯正をご提案することもあります。

矯正器具が目立つのを避けたい方には、歯の裏側にブラケットを装着する矯正方法をご提案することも可能です。ただし、表側に装着したほうが歯を動かしやすいため、複雑に歯を動かさなければならないケースでは、対応できないこともあります。

できるだけ矯正器具を目立たせたくない方には、歯の色に近い白いブラケットとワイヤーをおすすめしています。

マウスピース矯正の結果は、患者さんの管理に委ねられます。まず、決められた装着時間がしっかり守られていないと、歯の動きをコントロールすることができません。

また、装着するマウスピースの順番を守らず、自己判断でどんどん次のステップに進んでしまうと歯や歯茎を痛める恐れがあります。

そのため、患者さんご自身にもマウスピース矯正についてきちんとご理解いただく必要があると思います。

その患者さんの歯並び、年齢、矯正器具の使用状況などによっても変わるため、一概にどれぐらいと言うのは難しいのですが、マウスピースでちょっとしたがたつきを矯正するのであれば、半年から1年ほどで完了する方もいらっしゃいます。

抜歯が必要なケースや、動かす量が多くワイヤー矯正でなければ難しい方の場合は、2～3年は装着が必要で、さらにそれ以上時間がかかることもありますね。

矯正治療は、骨の中にある歯の根を動かす治療ですので、時間がかかるのは仕方がないことです。あまり急いで矯正しても後戻りのリスクがあるため、スピードを優先しないほうがよいでしょう。

ただし、部分的な矯正をご希望の場合には、もっと短期間で終えられるケースもありますのでご相談いただければと思います。

たとえば、インプラントや入れ歯、クラウンを被せる治療の前に、歯並びを整えておくと治療がスムーズに進みます。治療の前に周囲の歯並びだけ整えておくというご希望にも臨機応変に対応しています。このようにさまざまな症状について連携した治療を提供できるのも、当診療所ならではの強みのひとつかと思います。

従来の矯正方法では、奥歯を大きく動かすことや前歯を内側に大きく入れること、高さを変えることは困難でした。それらを可能にしたのが、歯科矯正用アンカースクリューで、矯正用インプラントとも呼ばれます。

歯科矯正用アンカースクリューという小さなインプラントを一時的に歯茎へ埋め込んで、矯正時の固定源とします。これにより、動かせる範囲が広がり、縦方向の移動も可能になりました。

埋め込むのは矯正期間のみで、治療が終わったらはずします。必要最小限の小さなネジなので、はずした後に傷跡が残る心配はありません。

マウスピース矯正の場合は使い方や食生活によってむし歯が大量にできてしまう恐れもあります。そのため、定期的なクリーニングで、むし歯予防を心がけていただくことをおすすめします。

むし歯になる要因として、生活習慣のほか唾液も大きく関係していると考えられています。お口の中は、食事をすることでむし歯になりやすい酸性へと変わります。唾液は、酸性になったお口の中を中性に戻す役割を担っています。しかし、マウスピースを装着していると、唾液が歯に触れにくくなるため、むし歯を引き起こしやすくなる恐れがあるのです。

そのため、矯正中こそ、むし歯を予防するためにお口の中を清潔に保つことが大切です。当診療所は、矯正だけではなく幅広い歯科診療に対応していますので、矯正中のクリーニングやむし歯予防についてもご相談いただければと思います。

ガミースマイルとは、笑ったときに上の歯茎が出てしまう状態のことを言います。病気ではありませんので、気にならなければそのままでも特に問題はありません。

しかし、見た目が気になって、社交性が低下し心理的な問題につながる方も多くいらっしゃいます。ガミースマイルがコンプレックスになってうまく笑えないという方は、治療を検討されてもよいでしょう。

ガミースマイルは、その原因に応じて矯正や歯肉切除術をはじめとするさまざまな治療方法があります。たとえば、上唇が大きく上がりすぎてしまうことや唇の幅が短いことが原因でガミースマイルが起きる方には口唇移動術という手術による治療を行っています。一方で骨格に異常が認められる方や、歯が正常に生えず歯茎がかぶさってしまっている方（萌出異常）は、適応ではありません。原因によって治療法が変わりますので、まずはご相談いただければと思います。

口唇移動術とは、上唇をめくった裏側、上顎口腔前庭部という上唇と歯茎の間にある空間の粘膜を帯状に切除してから、上唇の粘膜と歯茎（歯槽粘膜）を縫い合わせることにより、上唇が上がる量を制限する手術です。

また、我々が行っている改良型口唇移動術は、上唇小帯と呼ばれる上の歯茎の中央にあるヒダは切除せずに残します。これにより、術後に左右非対称になることを予防します。さらに組織の内側を縫合することで唇の過剰な動きを抑制することを目指します。

ガミースマイルの手術には、歯肉切除術という方法もあります。しかし、歯肉切除術を行うと歯が縦に長くなるため、歯の縦横比のバランスが崩れ、後にかぶせ物で修正が必要になることが多くあります。

一方、口唇移動術で切除するのは上顎口腔前庭部のみで、歯の周囲の歯肉には触れません。そのため、患者さん本来の歯並びを維持したまま、ガミースマイルのみの改善が期待できるというメリットがあります。

術後は、10～14日ほどで抜糸を行います。抜糸までは手術した場所に刺激が加わらないよう注意して生活していただくようにお願いしています。たとえば、大きく口を開けて話す・笑うことや硬い物を食べることは刺激になるので避けたほうがよいでしょう。

抜糸までは、腫れや皮下出血、痛みがありますが、1か月ほど経過すると和らいでいきます。

矯正治療は、健康なご自身の歯をお持ちの方ならどの年代の方も受けていただけます。当診療所では、お子さんから今までは矯正を諦めていたようなご年配の方まで、幅広い患者さんの矯正治療を行っています。

一部の歯を失った方でも、インプラントの前に周囲の歯並びを整える方もいらっしゃいますね。

また、お子さんの場合、成長期をうまく利用した矯正で土台作りをしておくと、その後、永久歯が生え揃ってからの矯正治療も楽になります。噛み合わせが早く正しい位置に定まったほうが、お顔全体がバランスよく成長していくことが期待できる一方で、がたつきがあるまま成長すると、その影響でお顔つきが歪んでしまう可能性もあるのです。

そのほか、歯並びを整えておくと、見た目を美しくできるだけではなく、歯磨きもしやすくなりますので、むし歯や歯周病予防にもつながるメリットがあります。

成長期の矯正はあくまでも土台作りですので、ワイヤー矯正は永久歯が生え揃う中学生以上になってから行います。

以前は、永久歯に生え変わってから矯正を行うのが一般的でした。しかし、今のお子さんは顎が小さいケースやがたつきがひどいケースが多く見られます。

そういったケースを放っておくと、永久歯が生えるスペースが足りず埋伏歯（埋まったまま生えてこない歯）が生じることもあれば、埋伏歯が隣の歯に接触し隣の歯の根を溶かしてしまうこともあります。

乳歯の段階で顎の骨を広げることや噛み合わせのずれを修正しておくほうがよいケースも最近は増えていますので、小学校に上がったら一度、矯正を専門とする医師に診てもらうことをおすすめします。お子さんの歯についてご不安なことがあればお気軽にご相談ください。

歯が20本残っていれば、硬い食べ物でも問題なく噛むことができると言われます。いつまでも自分の歯で物を噛むことを目指し、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」と以前から提唱されています。これを「8020（ハチ・マル・二イ・マル）運動」と言います。

では、80歳で20本の歯が残っている人はどのような人なのでしょうか。調査したところ、噛み合わせが正しく歯並びのよい方が多く、受け口（反対咬合）の方は0％という結果が得られました。

つまり、矯正治療で歯並びを整えることは見た目をきれいにするだけではなく、よい口内環境を作り、自分の歯を長持ちさせることにもつながるということが統計結果にも表れているのです。

見た目の改善だけではなく歯の健康のためにも、できれば若いうちから矯正治療をしておくことをおすすめします。まずはお気軽にご相談にいらしていただければと思います。