「家族のことまで相談してください!」地域に密着したプライマリ・ケアと健康意識向上への取り組みとは?|あんどう内科クリニック:安藤 大樹 先生
今回取材させていただいた先生
クリニックのコンセプトを教えてください。
ファミリードクターとして、患者さんの健康意識を高め、その方の家庭の健康問題にもアプローチすることです。
ファミリードクターとは、健康な状態から離れつつある未病の状態でのリスク管理や健康意識の向上など、病気になる前の段階から患者さんに関与する診療スタイルです。また、家族の介護や、お子さんの体調の問題など、患者さんの家族が抱える問題にもアプローチします。
当院は、地域の方々のファミリードクターとして総合診療を提供しています。また、診察以外にも、健康意識を高める活動や健康に関する行政サービスの紹介にも取り組んでいます。
患者さんはどのようなお悩みで受診されるのでしょうか?
内科をベースにさまざまな相談が寄せられます。
地域のかかりつけ医として、健康診断の異常や軽い風邪から、総合病院と連携したがん患者さんの経過観察やご高齢の方の人生終盤の健康管理まで幅広く対応しています。イメージとしては「身体に不調があるが、何科に相談すればよいのかわからない」という方が最初に相談できるようなクリニックです。
また、地域に密着した総合診療であるプライマリ・ケアを重視しており、患者さんの希望に寄り添った診療を大切にしています。
目指すのは1番安心できる場所。プライマリ・ケアについて
プライマリ・ケアではどのように診療を進めていくのでしょうか?
医学的な正解だけでなくその方の生活環境・習慣や家族構成を考慮したうえで治療を進めていきます。
プライマリ・ケアは、病気の予防から発症後の治療、治療後の経過観察まで、患者さんの継続的なパートナーとして、寄り添う診療スタイルです。患者さんにとって、「1番安心できて、困ったら最初に相談したい場所」を提供するのが、診療の目標となります。
また、病気の予防や、病気になる前の状態である未病の方の診察、治療後の長期的な経過観察もおこなっています。現在お持ちの疾患だけでなく、10年、20年後の健康問題に向き合うために、その方の人生に伴走するイメージです。
当院に訪れる方々の中には、「今は仕事で治療の時間が取れない」「家族の面倒を見る必要があるから通院できない」「今は様子を見たい」など、さまざまな事情を抱える方も大勢いらっしゃいます。そのため、生活環境や家族構成を考慮しながら、その方の希望に沿う形で治療を進めていきます。
プライマリ・ケアで、先生が大切にしているポイントを教えてください。
患者さんの様子を注意深く観察し、些細な変化に気づくことです。
プライマリ・ケアでは、患者さんの些細な変化から不調に気づく必要があります。そのため、待合室の様子や声のトーン、表情など、普段の様子を注意深く診るようにしています。たとえば、普段に比べて椅子から立ち上がるのが遅い、ふらつきがある場合には、年齢によってはパーキンソン病など神経系の病気の可能性を考えたりします。
また、患者さんの生活背景や現在の生きがいなども、病気のサインに気づく手がかりとなります。診療では、仕事や家族、趣味などについて話しながら、より深く患者さんのことを理解するようにしています。とくにご年配の方は、昔の仕事やお孫さんについてお聞きすると、生き生きとお話しされますよ。
あんどう内科クリニックで不定期に開催されている、健康フェアについても詳しく教えてください。
地域の方々が、健康に関する正しい情報を得られる場として勉強会を開催しています。
地域の方々の健康への興味を高めたいという思いから、勉強会のような健康フェアを開催し始めました。さらに、ホームページを介した健康情報の発信にも力を入れています。
こうした活動に力を入れ始めたきっかけは、コロナ禍において、医療に関するさまざまな憶測が飛び交い、日本中に混乱が広がったことです。当時は医師として、正しい情報発信の大切さを痛感させられました。今後も地域の方々に、健康に関する正しい情報を得られる場を提供していきたいです。
大切なのは一人ひとりに時間をかけること。心療内科について
心療内科ではどのような診療をしているのでしょうか?
主にストレスが原因で身体に不調が現れる心身症の相談に乗っています。
心療内科では、主に心身症の診療をおこなっています。たとえば、「朝の動悸が激しい」「午前中身体が重くて動けない」など、精神的な要因も視野に入れながら、不調の原因を探ります。
ただし、あくまで内科の範囲内での診療となります。うつ病や双極性障害、幻覚、幻聴などは対応ができないため、精神科の受診をご提案しています。
治療は、「以前と同じように仕事ができるようになった」など、不調が出る前の元気な状態にまで戻ることが理想的です。たとえ以前の状態に戻ることが難しくても、普段の生活や家族関係などを続けられる心身の状態を目標に、治療を進めていきます。
心療内科での患者さんとのコミュニケーションで意識していることを教えてください。
十分に時間をかけて患者さんのお悩みを聞くことです。
近年、精神的な不調を訴える方が増加しており、多くのクリニックで十分な診療時間を確保できていません。そのため、多くの方が「話をしっかり聞いてくれなかった」と感じ、通院をやめてしまいます。
しかし、最初の段階で病院に対して嫌なイメージが付いてしまうと、今後さらに大きな問題になり、結果としてその方の人生に大きな影響を与えてしまうかもしれません。
当院では、初診に20分ほど時間をかけ、患者さんの目を見ながら、お悩みを可能な限りしっかりとお聞きしています。また、診察時間を確保するために、タブレットでの問診も導入しています。さらに、治療によって病状が回復し、また働きたいと考えている方には、復職サービスなど行政支援を紹介することも可能です。
「全身を管理したい」という思いから総合診療科へ
総合診療を選択し、現在の診療スタイルに至ったきっかけを教えてください。
研修が終わる頃に「患者さんの全身を管理したい」と思い、総合診療を選択しました。
開業医をしている家に生まれたため、幼少期から医師という職業が身近な環境で育ちました。ただ、高校を卒業する頃まで、医師になるつもりはありませんでした。ですが、阪神淡路大震災をきっかけに、医療の重要性を感じ、医師になることを決意しました。
研修が終わる頃に、「患者さんの全身を管理したい」と思い、総合診療を選択しました。さらに、緊急性の高い病気を診る救急外来の指導にも携わり、総合診療と救急外来の両方を経験しました。その後、指導医として研修医教育に携わった経験などを通して、プライマリ・ケアという概念に出会い、現在の診療スタイルにたどり着きました。
現在は、月に一度の市民病院でのレクチャーや、当院での学生や研修医への指導、医師の勉強会への登壇などを通じて、プライマリ・ケアの重要性を多くの医師に広めています。
今後の展望についてはどのようにお考えでしょうか?
今後も地域の方々にとっての身近な相談窓口であり続けたいと考えています。
他院で診断がつかず、「何科を受診すればよいのかわからない」と困っている方の受け皿になりたいと考えています。また、再びコロナ禍のようなパニック状態が起こった時に備えて、地域の方々の感染症の相談窓口になれるよう、クリニックの機能を整備していきます。
健康な人生を送るためには、いつでも相談できるかかりつけ医を持つことが大切です。病院が苦手な方も多いと思いますが、当院では患者さんに寄り添いながら健康をサポートして参りますので、ぜひ一度ご来院いただければと思います。