
「痛くなったら行く場所」から「気軽に通える場所」へ。歯科医療の新しいかたちを提案する|歯科ハミール高田88:茂木 将 院長
今回取材させていただいた先生
インタビュアー



インプラント治療は、どのような悩みを抱えている方に適していますか?
歯を失ってしまった方や、入れ歯ではしっかり噛めずお困りの方、また着脱の煩わしさを感じている方に適した治療です。
40〜50代以降で歯を失う方が増える傾向にありますが、最近では若い世代でもインプラントを検討されるケースが増えています。
特に、噛む力が強いことで歯が破折してしまい、治療を希望される男性が多く見られます。歯ぎしりや食いしばり、集中時の無意識な噛みしめなど、日常の習慣が歯に負担をかけることがあるため注意が必要です。
将来的なトラブルを防ぐためにも、定期的なクリーニングと噛み合わせチェックを行い、歯の健康状態を継続的に確認していくことが大切です。

インプラント治療におけるこだわりや、最も大切にしていることは何ですか?
安全と安心を最優先に、骨の形成を待ってから埋入する時間をかけた丁寧な治療を基本としています。
最近では、歯を抜いたその日のうちにインプラントを入れる「抜歯即時埋入」という方法が注目されていますが、当院では急ぎません。症例にもよりますが、基本的には大学病院での経験に基づき、骨がしっかり形成されるのを待つ標準的な方法を選択します。(前歯の場合はケースによります)
時間はかかりますが、各ステップを患者さまと相談しながら着実に進めることで、長期的な安心につながると考えています。安全性を最大限に配慮し、一歩ずつ治療を進めることが当院のこだわりです。


治療期間と通院回数はどのくらいかかりますか?
通院回数はチェックなども含めて10回以内、期間はおおよそ7〜8ヶ月ほどが目安です。
インプラント治療では、頻繁な通院は必要ありません。治療の多くは、骨の形成やインプラントと骨の結合を待つ期間にあたります。そのため、忙しい方でもご自身のペースで進めやすい治療です。
骨の状態や追加の処置が必要な場合には、1年〜1年3ヶ月程度かかることもあります。インプラントを支える骨が不足している場合は「骨造成」という処置を行い、しっかりとした土台を整えます。これは、家を建てる前に地盤を固める工程のようなもので、安定した結果を得るために欠かせないステップです。

治療後のケアで重要なポイントは何ですか?
インプラントを長く維持するためには、定期的なクリーニングと噛み合わせのチェックが非常に重要です。
インプラントが虫歯になることはありませんが、歯周病に似た「インプラント周囲炎」という炎症を起こすことがあります。これは、歯と歯ぐきの間に細菌が入り込み、歯ぐきが腫れたり、出血したり、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまうこともある疾患です。
また、インプラントは骨と強固に結合するため、一度入れると体の一部として認識されます。しかし、特定のインプラントにだけ強い力がかかると、周囲の骨に過度な負担が生じ、トラブルにつながる場合があります。
こうしたリスクを防ぐためには、日々のセルフケアに加えて、定期的なクリニックでのメンテナンスが重要です。プロによるクリーニングと噛み合わせの微調整を継続的に行うことで、インプラントをより長く、健康な状態で保つことができます。
目立たずに理想の歯並びへ。インビザラインの魅力


ワイヤー矯正と比較した、インビザライン矯正のメリットを教えてください。
透明なマウスピース型のため装置が目立ちにくく、ワイヤー矯正で起こりやすい口内炎などのトラブルが少ない点が大きなメリットです。
ワイヤー矯正では、金属の装置が舌や頬の内側に当たり、痛みや口内炎を引き起こすことがあります。インビザラインは滑らかなマウスピースを使用するため、異物感はあるものの、そうしたリスクを大きく軽減できます。
また、食事や会話の際に一時的に取り外せるのも利点です。「矯正していることに気づかれにくい」という見た目の自然さは、多くの方にとって大きな魅力でしょう。

インビザライン治療を受ける上での注意点はありますか?
1日20時間以上の装着時間を守ることと、食後の歯磨きを徹底することが大切です。
マウスピースを装着したまま食事をしたり、歯磨きをせずに再装着したりすると、マウスピースと歯の間に細菌が溜まり、虫歯や歯周病の原因になります。また、歯を計画通りに動かすためには、1日20時間以上の装着を続けることが欠かせません。
インビザラインはご自身で着脱できる手軽さがありますが、その分、ルールを守る自己管理が治療結果を左右します。日々の習慣を大切にしながら取り組むことが、矯正をスムーズに進めるポイントです。


なぜインビザラインは多くの患者さまから評価されているのでしょうか?
見た目の自然さや快適さに加え、デジタル技術を用いた精密な治療計画と、豊富な臨床データに基づく信頼性が支持されています。
インビザラインでは、口腔内スキャナーを用いて歯型をデジタルで採取します。従来のように粘土状の材料を使わないため、不快感が少なく、精度の高い歯型データを取得できます。さらに、全世界で1,800万人以上の臨床データに基づき治療計画をシミュレーションするため、歯科医師の経験だけに頼らず、安定した結果が期待できるのも特徴です。
こうした最新技術と実績に裏打ちされた安心感こそが、多くの方に選ばれている理由だといえます。

治療期間と通院ペースはどのくらいですか?
部分的な矯正であれば約半年、全体の噛み合わせを整える場合は1〜2年ほどかかることがあります。通院は1ヶ月〜1ヶ月半に1回が目安です。
治療計画に基づき、7〜10日ごとに交換するマウスピースを一度に4〜5枚お渡しします。その後、約1ヶ月〜1ヶ月半ごとに来院していただき、歯の動きや清掃状態などを確認します。
治療完了後は、歯並びが元に戻る「後戻り」を防ぐため、保定装置(リテーナー)を使用します。特に治療後半年〜1年ほどは、就寝時を中心に装着していただくことが重要です。

インビザライン矯正における「治療のゴール」はどのように決めるのですか?
教科書通りの完璧な噛み合わせではなく、骨格やご要望に合わせた「個性正常咬合」を目指し、対話を重ねながらゴールを設定します。
必ずしも誰もが教科書通りの歯並びを目指す必要はありません。骨格的な特徴によっては、完璧さを追求することで治療が長引いたり、外科手術が必要になる場合もあります。そのため、まずは患者さまが「どこまでを目指したいのか」を丁寧に伺い、シミュレーションを確認しながら一緒にゴールをすり合わせます。
また、治療の途中でご要望が変わった場合は、再度スキャンを行い、計画の修正も可能です。患者さまが納得できるゴールに向けて、二人三脚で進めていくことを大切にしています。
すべての患者さまが安心して通える場所へ


先生が診療において大切にしている考え方を教えてください。
法人理念でもある「ホスピタリティ」を何より大切にしています。治療技術はもちろんですが、根本にあるのは人と人とのつながりだと考えています。
母が接客業をしていた影響もあり、昔から人と接する際の基本的な姿勢を大切にするよう教わってきました。相手の目を見て話すといった当たり前のことですが、多忙な医療現場では意外と難しいものです。
私たちは医療サービスを提供していますが、その前に「一人の人間として患者さまに向き合う」ことを重視しています。この姿勢は、スタッフ教育においても徹底しています。

歯科医師を志したきっかけは何だったのでしょうか?
高校生のときに参加した大学のオープンキャンパスで、「口腔外科」の講義に衝撃を受けたことがきっかけです。
当時は、歯科医師の仕事は虫歯治療や矯正治療が中心だと思っていました。しかし講義では、頸部郭清術という歯肉癌から首のリンパ節に転移したがんを歯科医師が外科手術で切除するという内容が紹介され、歯科医療の幅広さと専門性に大きな感銘を受けました。
それ以来、「自分もこの分野で力を発揮したい」と強く思うようになりました。

高田馬場というエリアならではの診療スタイルはありますか?
学生街であり、複数路線が乗り入れるターミナル駅でもあるため、若い世代から外国人の方まで、幅広い患者さまに対応できる体制を整えています。
高田馬場は、大学が多く新宿にも近いことから、さまざまな国籍や年代の方が行き交うエリアです。特に当院には中国出身の患者さまが多く、中国語を話せるスタッフや通訳、歯科衛生士が在籍しています。言葉の壁を感じることなく安心して通える環境づくりを心がけています。
特定の層に特化するのではなく、この街に暮らす多様な方々のニーズに応えられるクリニックを目指しています。

クリニックの雰囲気づくりでこだわっている点はありますか?
カフェのようにリラックスできる空間づくりを意識しています。スタッフとの関係性も含め、アットホームな雰囲気を大切にしています。
白を基調とした無機質な空間や、独特の薬品の匂いなど、いわゆる「歯医者さんらしさ」をなくしています。また、歯科医院にある緊張感をやわらげるため、間接照明を取り入れ、カフェのような温かみのある内装にしています。
また、私自身がスタッフに対して理不尽に厳しくせず、風通しの良い関係を築くことで、クリニック全体が自然とアットホームな雰囲気になるよう心がけています。
その空気感が患者さまにも伝わり、「また来たい」と感じていただけたら嬉しいですね。

今後の展望と、クリニックが目指す姿についてお聞かせください。
日本に根強い「痛くなったら行く場所」という歯科医院のイメージを覆し、美容院に行くような感覚で気軽にメンテナンスに通える場所へと変えていきたいです。
どんなに良い治療を行っても、その後のメンテナンスが途絶えてしまえば、新たなトラブルが生じる可能性があります。
アメリカでは予防歯科の意識が根づいており、数カ月に一度、髪を切りに行くような感覚で歯科医院に通うのが一般的です。日本でもそうした文化を広めるため、SNSやウェブサイトを通じて情報発信を行い、歯科医院をもっと身近な存在にしていきたいと考えています。
当院がその入口となり、地域の方々が「歯を守るために通う」きっかけをつくれたら嬉しいですね。



