
自分の歯を長く使い続けるためには、虫歯や歯周病の予防だけではなく「噛み合わせ」も重要|宮崎台まごころ川島歯科医院:川島 侑里 院長
今回取材させていただいた先生
インタビュアー



貴院では虫歯予防に力を入れているとのことですが、どのようなことをするのでしょうか?

将来歯を失わないために、歯が痛む前にケアする重要性を丁寧にご説明しています。
従来の歯科クリニックは「痛くなってから行くもの」「何も問題がない限り行きたくない場所」と考えられる方が多いと思いますが、このイメージこそが歯を失わせる原因だと考えています。
しかし、一度虫歯ができてしまったら、虫歯の原因を解決しない限り再発を繰り返すことになります また、歯は削れば削るほど神経に近づき、脆くなります。歯1本の価値は300万円と言われており、歯を失うことは皆さんの想像以上に大きな損失です。
そのため、当院の診療では始めに虫歯の原因と歯が失われる過程についてじっくり説明します。
歯を失う原因は虫歯、歯周病、噛み合わせの3つが関係するので、それぞれを詳しく紐解いて説明することから、当院の予防治療は始まります。


まず、歯を失う3大原因のうち虫歯と歯周病はどのように予防すべきでしょうか?

正しく上手な歯磨きを患者さんご自身でできるようになることが大切です。
口内トラブル予防のためには、ご自宅でのセルフケアはもちろん、トラブルがない状態だからこそ、定期的に歯科クリニックに通うことが早い段階で口内トラブルを発見するポイントです。
まず、歯磨きを上手にできていないと、歯の表面や根にプラークと呼ばれる歯の垢がつきます。そして、残ったプラークは唾液の成分によって歯石になってしまいます。
プラークは虫歯に、また歯石は歯周病の原因になるため、プラークが取れるような正しい歯磨きをしていただく習慣が大切です。そのため当院では、歯ブラシや歯間ブラシなどの正しい使い方をお伝えしています。
歯磨き指導をさせていただくにあたり、指導前に普段の歯磨きを見せいただくと、ほとんどの方はブラシ圧が強めで歯肉が腫れたり傷ついていたりする方がとても多い傾向にあります。強く磨けば汚れを落とせるという認識は誤っており、場合によっては歯肉退縮を引き起こし、知覚過敏になる方もいらっしゃいます。
市販の歯磨き粉の中にはお口に爽快感を与える成分が含まれているため、汚れの取り残しがあっても爽快感を感じやすいため、磨けた気になってしまうことも、歯磨きにおける落とし穴のひとつです。
なお、歯周病は初期から進行して歯が抜けてしまってもまったく痛みを感じません。"虫歯=痛くなる"と思われている虫歯も、実は痛みなどの症状が出るケースは意外と少ないため、大きい虫歯があっても痛みなどをそのまま放置してしまっている方も多くいらっしゃいます。そのため、虫歯や歯周病で痛みを感じる時はすでにかなり進行していることが多いです。
ほとんどの人が気づいていない歯の噛み合わせによる影響

歯を失う原因の1つに噛み合わせがありますが、これはなぜでしょうか?

長年の歯軋りや食い縛りによって、経年的に歯や周りの筋肉に過大な負荷がかかり、最終的に歯を失うリスクを上げてしまいます。
先ほどのピラミッド型の図にある通り、歯を失う原因の中でも噛み合わせが最も重要な要素です。虫歯や歯周病を治療しても、チカラによって歯周病は悪化し、虫歯再発のリスクが上がることによって、最終的に歯を失うタイミングを早めることにつながります。
実はほとんどの人は、顎が安定する位置と普段噛んでいる位置とズレたところで噛んでいると言われています。これにより、夜間行う歯ぎしりや食いしばりによる負担を大きくしてしまいます。その結果、無意識のうちに歯やまわりの筋肉に負荷が加わり、歯はすり減り、偏頭痛や肩凝りなど身体にもその症状が出てきます。
また、噛み合わせが悪いと歯がすり減ってしまうだけではなく、首や肩など全身に影響が出て、身体全体のバランスを崩し、肩こりや腰痛、頭痛、めまい、耳鳴りなど様々な症状が生じてしまいます。
その他にも、特に奥歯を中心に歯にかかるテコの力によって詰め物を浮かそうとする力が経年的にかかり続けることで、詰め物が少しずつ浮き、つけているセメントが溶けて流れ、その隙間に虫歯菌が入りこむことによって虫歯の再発リスクも上がります。

噛み合わせを治すにはどのような治療を受けるべきでしょうか?

主に対症療法としてのマウスピース矯正、根本治療としての歯列矯正があります。
日常生活において私たちの歯や顎周りの筋肉には体重ほどの力がかかっていると言われていますが、寝ている間(無意識下)には、さらに過大な負荷がかかると言われています。しかしながら、歯軋りや食いしばりはそもそも生理現象なので止めることができません。
一般的なマウスピースは、ただ上の歯型だけを 取り歯を覆うタイプのものですが、これでは歯や顎、また周りの筋肉にかかる負担を解消することはできないので、肩凝りや偏頭痛など、噛み合わせの不調和からくる症状は改善されません。
当院のマウスピースは、本来顎が安定する位置に合わせて作成するため、食いしばりの際は最小限の点で接し、また歯ぎしりの際、上下の奥歯が当たらないようにするため、全体にかかる負荷が最大で1/20に軽減できると言われています。
そうすることで、咀嚼、側頭筋、首、肩と今まで毎晩"筋トレ"していた筋肉を使う頻度が減っていくため、徐々に筋肉がやわらかくなっていき、歯ぎしり食いしばりからくる一連の不調が少しずつ緩和されていきます。
また、噛み合わせの根本治療として歯列矯正も有効です。歯列矯正を受ける多くの方は審美面を重視していますが、見た目だけ整えても噛み合わせは改善しません。噛み合わせを良くするには、歯を美しく並べるだけではなく、正しい顎の位置に合わせて歯の並びを整える歯列矯正が重要です。
みなさんは、頭痛があれば病院に、肩凝りがあれば整体に行きがちですが、それらが噛み合わせからくるものだという認識がまだ広く知られていないだけで、そこのケアをしてあげると、案外スッと症状が良くなることは珍しくありません。
今はスマホ時代でもあるので、ストレートネックになっても肩は凝るし、左右で視力が違っても肩は凝ります。
ですが、考えられる原因をひとつずつ消去していくのが医療の形でもあるので
95%の人が顎の安定する位置とズレたところで噛んでいるという背景を考えると、早期からの正しい噛み合わせのケアをお勧めします。
100歳になっても自分の歯で噛める喜びを

宮崎台まごころ川島歯科医院を今後どのようなクリニックにしていきたいですか?

患者さんがこの先もずっと自分の歯で食事を楽しめるように、患者さんの健康意識を高めるクリニックでありたいです。
みなさん若いうちは自分の歯で何不自由なく、美味しくご飯が食べられるのはごく当たり前のことかもしれません。しかし、それは一生続くとは限りません。
「歳をとったら歯はなくなっていくもの」と思っている人は意外と多くいらっしゃいます。でも、正しいケアを正しく行っていくことができれば、歯を失うことなくいつまでも自分の歯で美味しいものを美味しく食べることができます。
そのためには、①歯磨きを上手になって虫歯と歯周病によって歯が失われるのを防ぐこと、②噛み合わせのチカラによって歯が失われるのを防ぐこと。この2つが大切だと考えています。
日々臨床を通じて思うことは、患者さんの多くは自分のお口の中に興味がない方がたくさんいらっしゃいます。自分の歯が何本あるのか、自分の歯の形や歯の並び方がどうなっているのか…知っている方はほとんどいません。
そんな患者さんに、手鏡を持っていただき、プラークがどこについているかをご説明し、今のご自身のお口を“見える化”し、歯を守ることの大切さを含め、しっかりお伝えすると、みなさん目の色が変わります。お口の中に対する意識が変わり、やがてお口の中もキレイに整っていかれます。
そんなとき、この仕事を誇りに思います。

最後にこれから宮崎台まごころ川島歯科医院に来院される方に向けてメッセージをお願いします。

歯科医院には痛くなってからではなく、痛くなる前にぜひお越しください。
今後とも、患者さん1人ひとりが自分のお口と身体の健康寿命が延ばしていけるお手伝いができたらと心から思います。
虫歯や歯周病など、お口の中の病はサインを出してくれないことがとても多いです。
本来、定期検診は、「お口の中に何も問題がないことを確認するためにクリーニングがてら来院する」くらい、気軽に行っても良いと思います。
“痛い・怖い・できる限り行きたくない”場所と思われている歯科医院の一般的なイメージを払拭していきたいです。
1人でも多くの方が美味しいものを美味しく食べられて、人生におけるハッピーな時間が延びますように!