
「“攻め”の予防歯科」 院長が語る治療がいらない未来 ちあきあじさい歯科 水野裕文先生
今回取材させていただいた先生
インタビュアー



ちあきあじさい歯科はどのような歯医者なのでしょうか?

家族全員の予防医療をメインに行っています。
ちあきあじさい歯科のスローガンは「みんなで築こう健口家族」で、提供する治療内容としては予防医療を専門で行っています。
歯の健康を守るためには、家族単位での取り組みが重要です。例えば、子供の虫歯を予防したい場合は、親自身も口内環境を管理できるようになる必要があります。
そのため、当院では家族全員、子供・大人・お年寄りそれぞれのライフステージに合わせた予防歯科を提供しています。
また、実は「ちあきあじさい歯科」の名前は、家族全員の口の健康を守るというコンセプトから付けられました。あじさいは土壌のpHによって花びらの色が変わる性質があり、花言葉には「家族の健康」という意味があります。
そのあじさいの特徴から意味を取り、当院ではあなたの色(口の状態)に合わせた予防医療を提供し、家族が健康に楽しく過ごせるようになることを目指しています。

予防歯科とはどのような治療なのでしょうか?

そもそも虫歯にならない健康な歯を作ろうという考えのものです。
予防医学には、一次予防・二次予防・三次予防という3つのフェーズがあります。例えば、肺がんなら一次予防は禁煙、二次予防はがん検診による早期発見や治療、三次予防は治療後の再発を防ぐための工夫や社会復帰への取り組みなどが当たります。
これを歯に当てはめて考えてみましょう。
一次予防は、関してはお子さんや、まだ虫歯になっていない親世代の方へ向けた、虫歯にならないための予防医療が当てはまります。
二次予防は主に年齢的な問題によって治療してる歯が多い親世代が該当しますね。このフェーズでは、歯周病や虫歯を定期検診で早期発見して早期治療することを目指しています。
三次予防は、すでに歯を失ってしまった70歳以降の方が対象です。ここでは、インプラントなどを用いて歯の回復をし、食事ができるような口の中を目指します。
このように、一次予防・二次予防・三次予防を、 患者さんのライフステージに合わせて行います。テーラーメイドと言うのですが、その人に合わせて治療内容を考えていきます。
単純に口の中を見るだけでなく、その人の置かれている状況を見ることが予防医療の本質です。例えば、今までは口の中が良い状態だった方でも、家族の介護が始まったことで自分の時間が取れなくなり、口の中の状況が変わるケースもあります。
そのため、単純に口の中を見るのではなく、その人の置かれてる社会的背景を見ることが大切なんです。

患者さんの年齢層はどのようになっていますか?

全体で見るとお子さんとご年配の方が多いですね。
子供に関しては、キッズルームを置いているので、近所の子供歯科のような感じで来てくれています。また、虫歯予防にはセルフケアも大事なので、子供の歯の健康をまもりたい親御さんが学べる場所を提供することも心がけています。
また、これはよくあることなのですが、 子供への対応が良かったら親は自然について来てくれます。
いわゆる歯科難民というのですが、歯科医院がたくさんあるにも関わらず、 通っていない親御さんは多くいます。子供が歯医者を選ぶわけじゃないので、親にとっても良い歯医者になるよう意識していますね。
それと、当院にはお年寄りの患者さんも多くいます。ここ一宮市はモーニングの文化の発祥の地なので、井戸端会議がすごく盛んに行われていて、リアルな口コミでうちに来てくれることが多いんです。
お年寄りの方にも、丁寧な対応を心がけています。きちんと話を聞いて丁寧な説明をするようにして、一緒に将来の歯を守るために寄り添っています。
あとは院内の動線にもこだわりがあります。歯医者では先生が動くので院内が狭くなることも多いのですが、当院では足元導入(患者さんとスタッフの動線を完全に分けること)をしています。
また、車椅子の人でもレントゲンや検査ができるように工夫していますね。また、最近できた予防棟(歯科衛生士さんの予防に特化した棟)にも、子供が喜ぶような隠し扉を用意して、できるだけ患者さんが来やすい環境を用意しています。

予防歯科について、「虫歯にさせない」という意味はわかるのですが、「虫歯をうつさせない」とはどういうことですか?

実は、子供の虫歯の原因の多くは家族からの感染なんです。
虫歯菌の割合は、大体2歳半ごろ、遅くても3歳までに決まります。お子さんの食事に息を吹きかけて冷ましたり、同じ箸を使ったりすることで、親の唾液から子供に虫歯菌が感染するんです。
ですが、ご両親がきちんと定期検診に行って治療が終わっている場合では、子供へ虫歯菌が感染する確率は大体14%ぐらい変わるんです。
また、感染の経路としては母親が60%、父親が40%で実はお父さんから感染するケースも多くあります。そのため、仕事が忙しくて歯医者に行ってない方などは、注意してほしいですね。
習い事や、保育園・幼稚園などに通っている場合、菌の感染を100%防ぐのは無理があります。食器を完全に分けるなどして、気遣っている親御さんもいますが、そういう方の方が口の環境が良くないケースも多くありますね。
なので、感染経路に注意を払うだけでなく、自分たちで虫歯になりにくい習慣や歯磨きのテクニックを身に付けることが大事なんです。
予防歯科医がこだわり抜いたトータル50分のメンテナンスとは


メンテナンスにこだわりがあるようですが、どのように行っていますか?

50分と、時間をかけてじっくり行っています。
当院のメンテナンスの特徴は3つあります。
1つ目が、こちらで行う特殊な歯磨きの方法があることです。
2つ目は、歯にプラークがつきにくくするポリッシングという技術です。当院のポリッシングは受けてもらえればもらうほど、歯がツルツルになって、汚れがつきにくくなりますよ。
3つ目が歯磨き指導で、一人ひとりの歯並びや口の状態に合わせた歯磨きの方法を指導しています。

歯に汚れがつきにくくなるメンテナンスとはどういったものなのでしょうか?

来るたびに歯が強くなるポリッシャーを用いて行うものです。
当院のメンテナンスでは、床掃除するときに使うポリッシャーに似ている、ポリッシングというブラシを使います。メンテナンスといえば、定期的に通って歯の健康をキープすることを想像されるかと思いますが、当院の場合は来るたびに歯に汚れがつきにくくなるんです。
汚れがつきにくくなる効果をより持続させるために、患者さんには3ヶ月に1回のメンテナンスをお勧めしています。メンテナンスと歯磨き指導の相乗効果で、患者さんの歯に対する自信にもつながっていますね。

特殊な歯磨きとは具体的にどのようなものなのでしょうか?

丈夫な歯茎を目指す歯周病予防を行っています。
歯周病は要は感染症です。歯垢プラークの中にたくさんいる歯周病菌が、歯茎から体の中に入ってきた時に、歯周病に感染します。
そのため、歯周病になったときは、風邪をひいたような炎症反応が起きるんです。
当院では、風邪でいうと、普段から健康に気をつけるなどして、そもそもの免疫を高めて風邪になりにくい体を作るイメージで歯周病予防を行います。
私たちは、歯周病予防に特化した歯磨き方法として、岡山大学の予防歯科学講座で学んだ方法を採用しています。
簡単にいうと歯茎にブラシを通してあげて、歯茎の掃除とマッサージを同時に行う方法なのですが、マッサージ効果で歯ぐきがひきしまって、歯周病になりにくい歯茎を手に入れられるんです。

歯磨き指導をする際のこだわりなどはありますか?

エビデンスに基づいた指導を行うようにしています。
歯磨きの方法については、やり方と理由の両方に触れながら、自宅でできるセルフケアの方法を、時間をかけてしっかり教えています。
セルフケアに関しては患者さんにまず1回歯磨きしてもらって普段の磨き方を確認します。その後に、患者さんの口の中に合わせて、ブラシの当て方や持ち方などの技術的なアドバイスを行うんです。
あと、 セルフケアで重要なのは、歯周病や虫歯の予防をするためのグッズの選び方です。なので、フロスや歯間ブラシなどの清掃補助用具の選び方も全部一通り説明しますね。
また、スウェーデンのデータで、30年間メンテナンスに通いつつ、ご自身でもお口を清潔な状態が維持ができると、虫歯周病がほとんど進行しなかったというものがあります。そういったエビデンスも交えつつ、歯磨きをする上での目標値などを全部説明していますよ。

すごいですね。でも、自分だけでケアを続けるのも大変そうに感じました。

そうですね。予防の継続には、ライフスタイルに入ってもらうことが大事なので、続けてもらうための工夫をしています。
患者さんとのコミュニケーションでは、決して患者さんを否定せずに、褒めることを意識しています。100点満点で歯磨きできる人はいません。歯医者さんに、「このままだと歯が抜けるよ」と言われて、怖くて行かなくなっちゃう人も多いんですよね。
患者さんを褒めてモチベーションをあげることは、私だけじゃなくてクリニック全体・スタッフ一同で大事にしています。
また、当院のメンテナンスに通って頂ければ、回を重ねる度に、お口の状態がよくなります。患者さんのお口の状態に合わせて、メンテナンスの間隔を相談させて頂きます。当院にきちんと通って頂ければ、むし歯や歯周病になりにくいお口の環境が整います。
患者さんのライフスタイルに自然と予防が入れ込めるように、患者さんのモチベーション上げたり、通院の負担を抑えたりするなどの工夫はしていますね。
予防歯科のゴールはそもそも治療がいらなくなること


メンテナンスにすごく時間かけていますね。これが3〜4,000円で受けられるのはすごいですね。

正直カツカツです(笑)
でも、これが予防医療が広まるきっかけになればいいと思っています。
当院は、保険治療を行っていて、いわゆる3割負担で大体3,000円から4,000円ほどの間にとどめるように努力をしています。
実は、当院の歯周病予防のメンテナンスを知り合いの歯科医に見せたことがあるのですが、「東京でやるなら数万円のメニューになる」と言われたこともありますね笑
しかし、当院の保険診療が少しでも予防歯科が広まるきっかけになるといいなと思いますね。
特に、高齢者の方は、「どうせ歯はなくなるんでしょ」と諦めてる人も多いんです。ですが、虫歯にも歯周病にもならない歯って理論値では200年持つといわれています。
予防医療に今から取り組んでも遅くないので、本当にみんなにやってほしいと思っています。

ここまでして予防医療に取り組む理由などはあるのでしょうか?

大学院時代での様々な出来事がルーツになります。
岡山大学の大学院でお世話になった予防歯科学講座の指導医の先生や教授、薬理学の教授との出会いに、予防歯科を始める多くのキッカケがありました。
特に、薬理学の教授で薬の専門家である先生が、ずっと「これからは予防の時代だ。未病をどう考えるか?がこれからの医療では大切だよ」とおっしゃられたのが妙に引っかかっていたんですよね。
ここでいう「予防」は、早期発見などではなくて、そもそも虫歯や歯周病にならないことをゴールとしています。治療が必要ない医療がゴールになるので、とても攻めの予防なんです。
しかし、これらの予防に関しては、普通のクリニックに勤務しているだけでは実現できません。そして、自分の医療哲学を通すなら、独立するしかなかったので当院を開業しました。

予防医療への取り組みを積極的に行う、ちあきあじさい歯科の今後の展望について教えてください。

予防医療の範囲をさらに広めたいと考えています。
今後の展望としては、予防医療というものの範囲をどんどん広げたいと思っています。
歯並びも予防にとっては大切な要素です。子供の正しい発育には、親御さんのちょっとした癖の影響が強く出てきます。
例えば、子供をおんぶをしている肩が右利きなのか左利きなのかが、歯並びに大きく影響したり、顎の関節の成長に影響したりすることがあるんですよね。
0歳児からの歯科治療と言われることも多いのですが、親御さんの意識を高めてもらうことが大事なんです。
あと、実は最近注目されているのが子供のいびきです。エアウェイっていうんですけど、気道が細い子がすごく多くて、それは顎の発達が不良だからという風に言われてる説もあります。
患者さんに対してのメッセージとしては、一人でも多くの人が、予防歯科に興味を持って、当院を選んでくれるのであれば嬉しいと思っています。
また、今からでも遅くないので、歯に興味を持って歯の専門家の話を少しでも聞いてもらえたらなとも思いますね。