
「苦痛を和らげ、日常生活への復帰をスムーズに」術後の痛みを約72時間緩和する麻酔薬・EXPARELとは|LOCHIC CLINIC GINZA:小野 准平 先生
今回取材させていただいた先生
インタビュアー



最近SNSでもよく見かけるEXPARELとは、どういったものでしょうか?

術後の痛みを、3~5日間緩和させる局所麻酔薬です。
EXPARELは、2011年にFDA(アメリカ食品医薬品局)に斜角筋神経叢神経ブロックとして認可された、局所麻酔の一種です。
リポソーム化したドラッグデリバリー技術により、麻酔薬(ブピバカイン)が注入部位に留まり、ゆっくりと効果を発揮するため、通常の局所麻酔よりも長期間痛みを抑えることができます。これまで、米国で1500万人以上がこのEXPARELの投与を受けている、実績ある麻酔薬です。
私自身も、EXPARELを取り入れる際に、100人以上の患者様にご協力いただき、効果を研究しました。一般的な麻酔薬を手術後に投与した方と、EXPARELを投与した方を比較したところ、EXPARELを投与した方のほうが「痛みが少なかった」という統計学的なデータが得られたので、国内の学会でも報告しました。

一般的な局所麻酔との違いを教えてください。

一般的な麻酔薬のように短時間完全無痛になるのではなく、長時間痛みを和らげることができます。

一般的に、手術をしたあとの痛みや苦痛のピークは、術後2~3日間と言われています。EXPARELは、この間の苦痛を和らげられることが何よりの特徴です。
歯科治療などで経験したことがある方も多いと思いますが、一般的な麻酔の場合、麻酔を投与した2~3時間は無痛状態になります。これは、麻酔の水溶液が周辺組織にすぐに拡散するからです。一方、EXPARELはリポソーム・ドラッグデリバリー技術により、完全無痛ではなく痛みの感じ方を数段階落とし、効果をゆっくり長時間効かせることができます。この点が大きな違いです。術後でも痛み止めが必要ない、我慢できる程度の軽い痛みと理解していただければと思います。
ただし、どれだけ優れた麻酔薬を使っても、手技が粗雑であれば、術後に痛みが出てしまいます。当院では痛みを極力抑える丁寧な手術を徹底し、そこにEXPARELを併用することで、より快適な回復を目指しています。

EXPARELは、どのような治療での投与が多いのでしょうか?

当院では豊胸、脂肪吸引、鼻の手術などで多く使用しています。
当院では、豊胸、脂肪吸引、鼻の手術などでの使用が多いといえます。鼻の手術のなかでも、あばら骨から軟骨を移植するようなケースでは、移植元に投与することもあります。
私は豊胸手術を専門の1つとしていますが、豊胸手術を希望される患者様には、子育て中の方もたくさんいらっしゃいます。お仕事や育児をしながらでも手術を受けられるよう、術後の苦痛を取り除くことは大変重要なことです。
また、最近ではEXPARELの知名度が上がったことから、そもそもEXPARELを希望して来院してくださる方も増えてきました。筋肉を切る手術を受ける方や、回復を早めたい方に使用することも多いですね。

EXPARELを使用するメリット・デメリットを教えてください。

メリットは、術後の痛みを抑えられることで日常生活への復帰がスムーズになることです。デメリットは、費用面で負担がかかることです。

メリットは何より、術後の痛みを抑えられて日常生活への復帰がスムーズになることです。手術内容にもよりますが、EXPARELを使用すれば、土日に手術を受け、何の支障もなく月曜日に出勤することも可能となります。
また、入院するような手術の場合、これまでは背中に管を入れる硬膜外麻酔を使用することがありました。しかしEXPARELを使用すれば、管を繋ぐ必要もなく、シャワーも浴びられます。入院中の快適さが、段違いに異なるのです。
さらには、美容医療への恐怖心を取り除けるのも大きなメリットでしょう。施術の痛みが強いほど美容医療へのハードルは上がってしまいますが、術後の苦痛を取り除くことで、美容医療に前向きになれるのです。
一方、EXPARELは保険適応外であるため、費用面で負担がかかることはデメリットといえます。また個人差はありますが、副作用が現れる場合もあります。稀ではありますが、便秘、吐き気、嘔吐などが生じることが報告されています。
EXPARELを使いこなすには、豊富な知識と手術の技術が必要不可欠


LOCHIC CLINICでの、EXPARELの使い方を教えてください。

全身麻酔と局所麻酔を使用した手術をおこない、術後にEXPARELを投与しています。
EXPARELの使い方は医療機関によって異なりますが、当院では手術後、麻酔科医と綿密なコンタクトを取ったうえで投与する箇所を決めています。
まず、手術前には全身麻酔で眠っていただき、術前に一般的な局所麻酔をほどこします。眠っていても体は手術による侵襲を感じていますので、手術が終わった段階で、最も痛みを抑えてあげるべき箇所にEXPARELを投与するようにしています。
投与する箇所については、私の手術の経験によるところもありますし、手術を見ながら患者様の状態をモニタリングしている麻酔科医からの意見も取り入れます。全身管理している麻酔科医は、わずかな血圧の変動などで、痛みが生じた箇所を把握できているのです。
EXPARELは局所麻酔ですから、もちろん投与した周辺にしか効き目はありません。そのため、投与する箇所の判断を間違えると、効果が発揮できないこともあるのです。

場合によっては、効かないこともあるのでしょうか?

EXPARELの使い方に慣れていない医師では起こり得ます。
EXPARELは局所麻酔ですので、いかに痛みの強い箇所にピンポイントで打てるかが重要です。そのためにも、術中から観察し、最も痛みの大きなところを見極める必要があります。
これまで多くの医師の手術を拝見してきましたが、EXPARELを十分に使いこなせていないと感じたこともありました。どんな手術であれ、術後は広い範囲で腫れや痛みが生じるものです。そのため、どこが最も痛むのかを把握できていなければ、EXPARELの無駄打ちになってしまいます。
EXPARELを希望される方はぜひ、豊富な実績をもち、全身管理をする麻酔科医が常駐するクリニックを選ぶことをおすすめします。

EXPARELを実際に使用した患者様の声を教えてください。

「痛みがしっかり抑えられている」と喜んでいただいています。
EXPARELを使用した方からは、「翌日から普段どおりの生活を送れた」「痛み止めをほとんど使わなかった」「夜もしっかり眠れた」といった声をいただいています。飲む痛み止めは時間とともに効果が切れるため、飲み続けなければいけません。しかしEXPARELはその必要がないため、精神的にも余裕のある術後を過ごせるはずです。
当院では手術の翌日に来院していただき、経過を診るようにしていますが、痛みがあって当日来られなかった方は1人もいません。お子さんを抱っこして来院される方もいらっしゃるほどです。
なかには、脂肪吸引の翌日でもまったくの無痛だったことから、経過の診察のために来院した当日にほかの手術を予約してくださる方もいらっしゃり、「痛みがないから、もっといろんな治療を受けてみたい」といった前向きな声もいただきました。このように、EXPARELを導入してから、患者様の満足度が明らかに高まったと実感しています。
丁寧な手術と術後のケアでよりスムーズな回復を目指します


術後の回復をスムーズにするためにこだわっていることはありますか?

何よりも丁寧な手術をおこなうことが大切だと考えています。また、術後のケアも重要です。
術後の回復をスムーズにするためにEXPARELという選択肢を用いながらも、最も大切にしているのは丁寧な手術をおこなうことです。
また、私達は術後のケアも含めて医療だと考えています。術後の痛みの緩和には、薬の使用が一般的です。術後の炎症は人それぞれなので、当院では症状によって薬を使い分けています。最近では、腫れや内出血を軽減する飲み薬・シンエックを導入し、ダウンタイムの短縮にも力を入れています。
もちろん、術後の経過観察も欠かせません。手術に応じて診るべきタイミングがあるので、私自身がしっかり診察し、小さなトラブルも見逃さないようにしています。
さらに、術後の注意点を患者様にしっかり守っていただくことも必要不可欠です。患者様とのコミュニケーションをしっかりとり、双方が協力し合うことを意識しています。

美容医療を検討されている方に、メッセージをお願いします。

回復プロセスを、トータルでサポートいたします。お気軽にご相談ください。
当院では「美容である前に、医療である」を理念にかかげ、患者様の安心・安全・満足を第一に考えています。美容医療は美容の側面が先行しがちですが、扱うものは人体であり、その目的と行為は、人生を幸せにする医療であることを忘れてはいけません。
美しい仕上がりはもちろん、 心地よく回復できることも、美容医療における大切な価値だと考えています。その回復プロセスをトータルでサポートできるよう、日々取り組んでいます。
術後の痛みが不安な方や、美容医療が気になるけれどライフスタイルを崩したくない方、崩せない方はぜひ、当院にご相談ください。